高校留学の競争が激化してきた
襟元にはユダヤの星のペンダントをしていた。
授業に熱が入ってくると、声のトーンはいちだんと高くなり、教卓に軽く腰掛けて脚を組んだ。
日本人の中年女性だったら絶対にしないポーズだったが、宝塚の男役のようにきまっていて、格好よかった。
私がいつも最前列で聴いているのを見て、ある日先生は、「今度研究室にいらっしゃい」と声をかけてくれた。
翌週訪ねていって、何を言われるのかと緊張していると、「どうして私の授業を取っているの?」と、まずきいてきた。
私は、アメリカが大規模な選挙を控えているこのとき、国民がどのような流れを選択するのかに大きな関心を抱いていること、日本での学部時代にもアメリカの政治市民運動に興味をもち、「C・C」という団体の活動をテーマに卒論を書いたことなどを話した。
先生は、以前にも日本人のフェローが授業をききに来た話をした。
私は、フェローの聴講が許される意味について考えていた。
1つは、授業から得た知識によって、新たな視点を築き、いつの日か仕事に活かすためである。
これは直接はフェロー自身のメリットになるが、場を提供した大学側にも長期的な利益があるかもしれない。
もう1つは、フェローがそれまでの職業経験によって得た専門知識を、授業で発表したり、学生や教授とディスカッションすることによって、お互いの見解を深めていく役割である。
これが十分にできれば、自分も充実した知的生活を送れるし、大学にも貢献したといえるだろう。
しかし、私が短い滞在でどこまでできるかは、まったく予想もできなかった。
私は、試しにF先生に、「日本でももうすぐ総選挙があります。ご存じかもしれませんが、選挙制度が変わり、小選挙区制になって初めての投票です。もし関心がおありなら、結果の分析のサマリーを作ってきましょうか」と提案した。
先生は同意してくれた。
アメリカの大学の大きな魅力の1つは、「現場の経験に裏付けられた生きた授業」ということだと思う。
コロンビアでは、私がちょうど帰国するころ、C政権で大統領首席補佐官をしていたS氏が授業を持った。
受講した学生の話では、37歳のS氏はさすがに話術も人を引きつけるもので、アメリカの政策決定プロセスが生き生きと伝わってきたということであった。
私の最初の学期には、1つ日米関係を含む貿易問題を取りたかった。
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